Philip Casey 伊藤 範子1989年12月のこと、ダブリンで「無実抗議パレード」を支持していたテスとマンゴーが出会う。彼らは何度か接点を持ちつつ近づいていきついに、リフィ―川にかかるヘパニー・ブリッジ近くのThe Winding Stair Bookshop & Caféで会う。二人の共通点は、互いに相手に警戒心を抱いていることと、罪の意識にさいなまれていること。テスは夫と別居中で、息子を夫のところに置いてきている。マンゴーは、ある晩酒を飲んでいて落としたタバコに気づかず、それがもとで火事になり、息子が火事で死にかかった。本当の自分、今どういう状況にいるかを見せるのが嫌な二人は、お話を作り出してごまかす。テスは、ベルリンの嘘っぱち生活を、マンゴーもテスにならって、バルセロナのウソ生活を、語る。仮面ペルソナは二人の激しい恋に火を注ぎ、二人が罪の意識をはっきりと持ち、彼らが幸福になろうとすれば、必然的に伴う責任を引き受けるという方向に引っ張っていく。『現代小説評論』の中で、エーモン・ウオールはこう書いている:「行ったこともない場所での冒険話が、お互いの人生に対する深い洞察につながっていく、魅惑的なダブル・ナラティヴを形成している。」
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188 Pages